Lime JuiceLimeの活動日記
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瑪瑙(めのう)と実験器具の微妙な関係 00:01
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    さて天気のめぐりが早くなってきた・・・雨が上がるごとに木々の目が芽吹き・・・山に萌木色のグラディエーションがかかる頃、山菜も美味しくなる。

     

    さて・・・私はしがない研究者なのだが、最近会社でこの研究者や研究職に対する風当たりがとても強い・・・

    研究は金を喰う!! 企業では一般的にその研究費は現場を受け持っている人達が、製品を生産し稼いだ源泉で補われているので、ほんと現場の人に感謝しないといけない。

    そして、金をつぎ込んだからと言っても新製品などそうそう出る物ではない・・・なので研究成果が製品となって世に出るまでは、とにかく莫大な費用を消費する。

     

    しかもそういった研究で使う器具はとても高い・・・普通のフラスコでも個人で買おうとすればそこそこ躊躇する値段だが、それが計量校正をうけたメスフラスコなんかだと、その数倍はする。 

    ちょっとした不注意! 言い訳がましいがほんと不注意なんです・・・パリン!!と軽やかな音とともにいとも簡単に砕け散る・・・ガラス自体も薄く作られているので、コツンとどこかに当てるだけでも見事にクラックが入ってしまう。そうなると修正などきかず、廃棄処分になる。

     

    分析機械でもX線を発生させる機械なんかは、修理に素人が簡単に手を出せるものでなく・・・専門の業者を呼ぶ事になる。

    そういうものを手順を間違えたりしてブッ壊すと大変だ・・・莫大な費用がかかる・・・そして日ごろの慣例からの、うっかりミスが意外に多いのも事実・・・職場のいろんな人が様々なサンプルで使うので個々での管理が追い付いていないのも現実!

    使おうと思って予約をしておいたら、自分の時になってなんとX線の管球が切れるといトラブルにあった事もある・・・このX線を発生させる管球と言うやつは、ある日突然まるで白熱電球のフィラメントが切れるがごとく、突然寿命が尽きる・・・何もヘマしてないのに「あっ!俺なんかやっちゃったかなぁ〜」と自己嫌悪に陥ったことがある・・・(苦笑)

    そしてその管球の価格が、なんと300万程するので、もう色んな意味で心臓にに良くない・・・そこそこの自動車買えるじゃん!

     

    実は前回の瑪瑙の記事にちょっと絡めて・・・研究者でないと出会えない、実験器具のちょと奥が深い世界に皆さんを案内してみたい

    前半ちょっとおふざけが入りますが・・・それもいつもの習慣!?

     

    さてここで・・・私が”男子校の化学の教師”になったシュチエーションで・・・ちょとした実験器具に関する問題を出してみたい。

    もう男子校の教師というのがミソで・・・

    さて問題です・・・

     

    Q1.以下の語句例から”妄想”して、四角(□)に当てはまる漢字一文字を入れて、化学で使用する実験器具の名前を完成させなさい。(四角にはすべて同じ漢字一文字が入ります。)

     

    語句例(妄想用!?) □房ー□首ー□輪 

    実験器具名      □鉢ー□棒

     

    答えはこの下にあります。

     

    ハィっ!思春期の男子はみんな正解でしたね! よくできました!!

    体のパーツを表現する言葉ですが、一つの漢字でもここまで多様に読み方が変わるのは日本語の素晴らしいところです。

    □に入る漢字一文字:回答は「」である・・・(笑)

     

     

     

    実はこの器具・・・小学校などででも使われているので、年齢層や性別問わず実際には結構な知名度がある物です。

    名前は知らなくても、独特の形状をしたこの白いヤツ!見たら・・・あぁ!あれね!ってなると思う・・・

    実際の器具名は「乳鉢と乳棒」

    磁製乳鉢.jpg

    ざっくり言うと、硬い物から軟らかい物まで、色んな塊をすり潰す時に使います。 

    さて・・・すり潰す事を難しい言葉では(擂潰=らいかい)というちょっと聞きなれない言葉を使います。

    しかし日常使用では・・・「ゴマを擂潰」するなどとはなかなか使いませんが・・・(笑)

    研究室では、主に固まった試薬をほぐしたり、分析をかけたい結晶状の合成物などをこれに入れてゴリゴリとやったり、粉物などはシュッ!シュッ!と軽やかな音を立ててかき混ぜます。

    過酸化物試薬なんかは、下手にゴリゴリやると軽く爆発することがあるので、大量にやっちゃあいけません。

     

    この器具!作られている素材によって価格もピンキリ、すり潰す物の硬さによって使用する材質を変えなければならなく、例えばガラス乳鉢と乳棒でアルミナの粒なんかを擦ったら、器具がサンプルの硬さに負けてしまい、逆に乳鉢と乳棒を削っているようなものになってしまいます。

    こういったシーンで素材との相性を見る為に、皆さん鉱物好きが、”知っていてもフィールドで中々出番が無い”「鉱物のモース硬度」の理論が役に立ってくるのです。

    なので購入すると、付属されてた説明書には使用できる素材の一覧表などが添付されている場合もあったり、もし無い場合は、いきなりゴリゴリやる前に、サンプルの成分と乳鉢の相性を調べてから使うのが正しい使い方です。

     

    乳鉢と乳棒は言わずと知れた、切っても切り離せない最強のコンビです。 どちらかが欠けても擦り潰す事はできなくなってしまいます。購入する時は「対」が基本・・・高価な器具になるほど、面合せしてあるものがあったりするので、同じ材質の物でも近くにあったからと言って、違う組み合わせで使うのは本来はNGなんです。(これ意外と知られていない) 

    もちろん乳鉢と乳棒の異種素材の組み合わせなんかご法度である。

     

    まぁ書くまでもないが、異種同士の組み合わせなんかしたら、どちらかが負けて削れ、その成分がサンプルの中に入り込んでしまい、分析にかけると変なピークが出たりして「あれっ」となったりします。

     

    なので高価な材質のモノによっては破損が痛手になる事も、そしてなぜか「乳棒が破損する割合がとても高い」のです。 ほんとうっかりするとコロン!と机から転がり落ちて、床がコンクリートなら、いとも簡単に半分に折れます。

     

    すり潰す時のなじみやすさを乳棒の、その形状が支えているので、それが致命的に転がり易い形状になっている事で、破損事故を招きます。・・・持ち運ぶ際も乳棒が乳鉢から落ちて折れる事故が発生します。金属製の物は別として素材がセラミックなので基本硬いものほど脆いのが、この素材の宿命でもあります。

     

    なので・・・とても高価なメノウ乳鉢は大切に使われています。 

    独特の見慣れた模様がありますよね! 天然の原石からいい部分だけをカットしてこういった形状に仕上げられます。

    なんじゃこれ! 新品買えよ!!と突っ込みたくなりますが・・・こういうがなまじ往生際の悪い日本人の特性で、なまじ器用な性格が災いしています・・・(笑)

    IMGA0399.JPG

    もう骨董の器を「金継ぎ」したような物・・・満身創痍なメノウ乳鉢・・・(笑)

    いっそうの事「漆と金でやれよ!!」って言われそうですが、さすがに圧がかかるのでエポキシ接着剤の出番です。

     

    床にぶちまけた時は、中のサンプルよりもコイツがバラバラになったショックが大きかった・・・(涙)

    スローモーションのように飛び散るシーンが今でも脳裏に焼きつています。

    乳棒の方も落として半分になった所をつないでいます・・・(笑)これは別の日にやらかした!

     

    いかんせん、さすがにこれでは作業性が悪いので、もう1個を奮発してみました。

    これでもウン万円します。

    IMGA0401.JPG

    天然の原石と解かるような、模様が入ってます。

    IMGA0402.JPG

    さて・・・折角なのでコアな読者の御希望通り・・・光を透過させてみましょう

    IMGA0403.JPG

    みて!みて!この幻想的な色合い! 以前にmoriさんがコメントしてくれたように・・・硬い素材なのにゼリーを思わせるような軟らかな見た目がなんとも美しいです。

    IMGA0404.JPG

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    擦り面には、乳棒を強く当てた圧痕が残りますが、粘り強いメノウならではの強度で、よほどの事で無い限り、欠けたりしません。

    高い圧力で押しつけても欠けたりすること無く、独特の滑り性を持ち合わせて、メノウが持つ潜晶構造によりサンプルをきめ細かく粉砕する事が可能です。ほぼ珪素なので不純物の混入も避けれます。

    IMGA0406.JPG

    私が個人で所有している物、下はかなり大型のメノウ乳鉢です。 でもメノウの質は上に乗っているグレー色した方がいい物です。

    IMGA0407.JPG

    これにも独特な模様が見てとれます。灰皿にしか見えん!!ってか??

    IMGA0408.JPG

    運ぶ時は専用のトレイに入れるのが一番いいのですが、ちょっとしたテクニックとしては、こうやってグワッと鷲掴みして、乳棒を人差し指と中指で挟むと安全です。(かっこいい持ち方です。)

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    とにかくメノウ乳鉢は使いやすさは抜群!でも高価なので、ちょっと欠けたくらいでは買い替えはしません・・・これが一般的なガラス製の物や磁製乳鉢と呼ばれるものならば、「気軽に捨てて新品を注文!」という事になりますが、その素材が特殊な物になればなるほど、一気に価格は跳ね上がり、下手するとやらかした折には始末書モノになりかねません。

    1498008188-863593_2.png

    最近は「サファイヤ乳鉢」などというこれまた恐ろしい物が存在するので、こんなのをうっかりやらかしたら、私の給料の全額が軽くブッ飛びます。職場に無くてよかった!こんなん使うだけでドキドキで!心臓に悪いやんけ!

     

    合成サファイヤの原木(正式名=インゴット)から削り出して作られます。下の画像(合成サファイヤ・インゴット)

    これ作るためにでっかい、白金坩堝が使われています。それはそれでいくらするんだろう!

    Img346038704.jpg

     

    さてここで、突然ですが「乳鉢ランキング」(価格別)大きさの表記は、多少誤差があります。

    基本は乳鉢の直径で表します。100φ(φ=ファイ)=100mmのこと

    サイズと価格の比が凄いものがあります。

    日常生活では全く役に立たない情報です・・・(笑)

     

    第13位 磁製乳鉢 110φー約800円 

    理科室に置いてあるのもコレ、画材屋さんや東急ハンズでも買えます。

    磁製乳鉢.jpg

    第12位 ガラス乳鉢 120φー約1000円 これも画材屋なんかで見かけます。

    ガラス乳鉢.jpg

    第11位 鉄乳鉢 120φー約20,000円 銅の精錬の時に使っている物です。(鋳鉄製)

    このような深いタイプは突いてサンプルを破砕できますが、普通の形状の物ではこういった使い方は負担をかけます。

    IMGA0278.JPG

    第10位 石英乳鉢(溶融石英)100φー約50,000円 そこそこの純度の石英を溶かして固めてから削り出してあります。

    この辺りから個人所有が難しくなてきます。

    石英乳鉢.jpg

    第9位 アルミナ乳鉢 110φー約65,000円 高純度のアルミナを使って擦り面は磨いてあります。

    アルミナ乳鉢.jpg

    第8位 メノウ乳鉢 100φー約86,000円 ちょうど鷲づかみできるサイズです。

    02088801.jpg

    第7位 ジルコニア乳鉢 100φー約150,000円 この辺りから金額的にもぶッ飛んできます。 そして見る機会も減ってきます。

    ジルコニアはちょっと黄色っぽい、ぬるりとした独特な質感が何とも言えません。 光も少し透過します。 

    何よりも比重があるので、めちゃくちゃ重い!!

    ジルコニア乳鉢.jpg

    第6位 合成サファイヤ(コランダム)乳鉢 100φー約190,000円 実物は見た事ありませんが・・・紫外線当てたら多分ですが蛍光しそうな色してます。

    合成サファイア乳鉢.jpg

    第5位 高純度石英乳鉢(単結晶石英)100φー約300,000円 (城戸メノウ乳鉢製作所が誇る、日本品質の決定版!)

    マイクログラム程度の結晶化したサンプルを「カリッ」とやる時に使います。

    多分ですが人工水晶の単結晶インゴットから削り出していると思います。もう芸術品です。

    単結晶石英.jpg

    第4位 窒化珪素(シリコンナイトライド)乳鉢 サイズ80φー約350,000 サイズと価格の比がすげぇ〜

    あと個人的に名前がかっこいい!

    窒化珪素.jpg

    第3位 炭化タングステン乳鉢 60φー約300,000円 タングステン自体も高価で硬い金属なのに、炭化処理なんてしたら削れへんやろ!って思った一品 たぶんめちゃ重いはず・・・このランキング中でサイズ比では一番重たいと思います。

    炭化タングステン.jpg

    第2位 炭化ホウ素(ボロンカーバイト)乳鉢 サイズ80φー約600,000円 100φ切るのに60万ってもう!

    炭化ホウ素.jpg

    第1位 サファイア乳鉢(合成サファイヤ単結晶インゴットの削り出し)80φー約600,000円 たぶん最強な日本品質!

    何をすり潰す・・・ほうれん草のおひたしにかけるゴマを、これでスリスリしてみたい・・・(笑)

    一家に一個は常備したい一品です。

    image.jpg

    参考資料出典

    https://www.kido-japan.com/

    ・城戸メノウ乳鉢製作所

    ・理化学機器 アズワン

     

    さて乳鉢と乳棒好きになってくれましたか? 使用用途は様々、素材が持っている硬度を利用してダイヤモンド以外ならゴリゴリすり潰せます。ついでに「意外とフィールドでは役に立たないモース硬度」の勉強もできます・・・(笑)

     

    そのうち、合成ダイヤモンド乳鉢ってのが出てくるかもしれない・・・出ても買えない・・・落としたら割れるのか?

    割れたらクビが飛ぶと思う・・・(笑)

    そんなん出たらもう最強です。ファセットカットにしてゴージャスに使ってみたい!!

     

    今回も長文、ここまで読んで頂きまして、ありがとうございました・・・(^O^)/

    こんな単純なメノウでも立派な実験器具となって、私達のようなしがない研究者を支えるすばらしい道具になってます・・・

    そしてとても役に立つ素材の一つです。

    聞いた事ある素材もちらほら出てくるので、鉱物好きのみなさんなら親しみやすいと思います。

    それを研究者だけが手にとってニヤニヤするだけでなく、折角なので皆さんにお伝えしたかったので記事にしてみました。

     

    ではでは・・・

     

     

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