Lime JuiceLimeの活動日記
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銅の精錬 Vol.4 焙焼鉱石からの租銅精錬 16:07
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    やっと冬らしくなったと思ったら、今度は寒気の影響で平年よりも寒くなっています

    北陸や東北、日本海側は雪が続くところもあって、当然の所日本海も時化ているらしいので、ヒスイ採集にはいい波加減かもしれませんね

    しかし時々くる高い波にさらわれないようにしたいです。

     

    少し前の記事になりますが、京都造形芸術大学の学生さんに依頼され行った銅の精錬の記事を書きます。

    前回は、粗銅の溶解に使用する高温炉の設計と空焼きを行ったので、今度はこの炉を使用して11月24日に粗銅の精錬を学生さんと行いました。(この記事は連載物なので、今初めてご覧になられた方は以前の記事から参照してください)

    以前の記事・リンク先(事の顛末は末尾番号の若い物から・・・)

    http://limejuice.jugem.jp/?eid=230

    http://limejuice.jugem.jp/?eid=226

    http://limejuice.jugem.jp/?eid=222

    http://limejuice.jugem.jp/?eid=221

     

    銅鉱石を焙焼からやってもらうと、この2日間という限りある時間の中ではすべての工程を回しきれなくなるので・・・

    その為、今回は銅の焙焼までを、先に私の方で終わらせていて、要の粗銅の精錬のみを行っています。

    通常の純銅は1300℃以上でないと液体のように融かす事が出来ませんが、粗銅は他の金属が不純物として入っているので

    融点が下がっている事もあり800℃以上に上げる事で、簡単に解かすことが可能となってきます。

     

    簡単な言い方をすれば、電子工作などに使用するハンダが鉛と錫などが混じった状態で簡単に言う「合金化」しているため、融点が下がっているので、コテで使用するような200℃〜300℃という比較的低温でも、液体化するその作用を利用しています。

    またハンダの場合は、結合したい金属線などと簡単に「合金層」を形成するため、金属と金属を結合することが可能になります。

     

    今までのおさらいですが、銅の精錬作業は純度も必要ですが、それよりも硫黄と結合して硫化銅になっている事で、その硫黄分を高温にして引っぺがすことから始まります。 そして残った銅を酸化させて酸化銅としてから還元して粗銅を得るわけです。

    なおその他に、鉄も硫化鉄といった状態で含まれているので、それもシリカ分と結び付けてできるだけ銅と分離できるようにしなければいけません。

    物凄く乱暴ないい方ですが、「具材も含めてごちゃまぜ状態の「豚汁」から「塩分=NaCl」だけを分離しなさい」と言われているようなもので、それを造滓材というスラグを作るものを入れながら、目的の銅だけを取り出そうとしています。

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    あらかじめ銅鉱石を砕き、高温で焙焼しておいた黒く変色した鉱石を黒鉛坩堝に仕込む準備にかかります。

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    焙焼してあるものは、銅鉱石の成分が半溶融状態で固まった物もあるので、それを鉄乳鉢で崩します。

    余り細かくし過ぎると、熱の通りが悪くなるので、大きな塊は10mm程度の物になれば大丈夫です・・・粉にする訳ではありません。

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    鉄乳鉢で砕いた物です。

    焙焼されているので、元の銅鉱石を砕いた時のように薄い黄金色はしていません。

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    そこに、石灰石を砕いた物と、コークスを砕いた物を入れて混ぜます。

    石灰石は硫黄と結び付けて、スラグ化させる役割と、スラグの流動性が上がるので熔融した溶湯が対流撹拌しやすくなり

    更にスラグ化がしやすくなります。

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    今度はそこに、珪石を砕いた物を追加して、黒鉛坩堝に入れて準備完了です。

    実際の精錬では様々な方法が文献で解説されています。

    温度が上がって溶け始めてから珪石を投入される場合もありますし・・・その時はスラグ化の進行を見ながら後から造滓材を随時追加する方法もとられていました。

    今回は時間短縮とコークスの使用量をできるだけ少なく熱に還元したいがために、初回から多めの造滓材を入れて、炉で一気に熔融状態まで高温にしてからスラグ化する方法を採用しております。

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    すべて自分で経験したいという彼女は、汚れ仕事も含めすべて自らで体験する素晴らしい感性の持ち主です。

    なので・・・わたしのやる事が無くなってしまいます・・・(笑)というより自分もやりたい!

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    炉の方はあらかじめ息子が余熱していたので、そこに坩堝をセットして、コークスを追加して熱の反射板兼、マッフルの役割をする蓋を載せます。炉蓋の排気口から内部の写真を撮影中の彼女を横から撮影しました。

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    初めは送風ファンを遠くに置いて昇温開始です。

    コークスに完全に火が回ったら、勢いよく送風を開始します。

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    コークスに火が回り始めると、排気口からジェットが出始めます。炉の内部が高温になってきたあかしです。

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    この日は結構寒かったので、こういった火を扱う仕事は楽しいですが、炉の断熱性能が良すぎて輻射熱の恩恵はありません。

    ここから噴き出す熱が暖かいので、暖をとる為にこうして近づきたくなります。

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    ここからの画像は、動画をキャプチャーした物なので、サイズと解像度が多少悪くなっていますのでご了承を・・・

    黒鉛坩堝の中心が黄色く眩しく輝き始めたら、温度が1000℃以上あがっています。

    「坩堝の奥の眩しく黄色く光る部分が溶けた粗銅です」

    ※実際にはすさまじい熱で近づくと危険を感じます・・・それと実際にはもっと黄色く明るいのですがカメラが勝手にアイリスを絞ってしまい若干暗めに映ってしまいました。

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    揺らすとこのように黄色い部分がゆらゆら動くので、熔融状態にある事が確認できます。

    そしてこの黒鉛坩堝の内部に周囲に付いている物が、スラグ化した不純分です。

    これから危険な「スラグ掻き」を開始です。

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    先の曲げた鉄棒と鉄挟みで、坩堝の上に浮いたり周囲に付着したスラグを取り除きます。

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    スラグはある程度とらないと、坩堝を傾けた時に溶湯が流れなくなります。 しかし取り過ぎると逆に湯が冷えやすくなるので・・・掻きだしたらすぐに粗銅でできた溶湯を流さなければなりません。

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    覆われていたスラグが取り除けられたので、熔湯が見えます。

    ここからが更に危険です・・・学生さんには飛散防護面と耐熱手袋をしてもらい・・・黒鉛製の「インゴット・ダイ」に溶けた粗銅を流し込みます。

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    真赤に焼けた黒鉛坩堝を取り出します。

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    溶けた湯が、付着したスラグの脇を流れて坩堝の奥から出てきます。

    準備したインゴット・ダイに狙いを定めて流し込みます。

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    初湯の流入です・・・拍手!!! 

    昔の本によると・・・ここで工場長が樽酒に槌を入れ作業者に酒がふるまわれます。

    本人は緊張でそれどころではありませんね!!

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    不用意に近くに寄り過ぎると、もし水蒸気爆発でも起こしたら怖いので、ビデオをズームして撮影しました。

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    以前にも説明した事がありましたが、熔融した高熱の金属体は強大な表面張力があるので、サラサラでとても流れやすい流体です

    大きな表面張力のせいで、型に入れた面が丸く盛り上がっているのが解かってもらえるかと思います。

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    これで湯切れです。

    表面の温度が下がり始めて、温度が黄色からオレンジ色へと変化します。

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    坩堝は再度加熱されての最後の一滴まで排出します。

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    今度はアングルに流します。

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    息子が興味深そうに冷えて行く粗銅を見ています。

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    学生さんはもう一度炉に戻して加熱し、再度流しこれですべて流し切ったようです。

    お疲れ様です。怪我も無く終了できました。

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    完全に冷えてから、家に持ちこみました。

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    ちょっと写真写りが良くないので解りにくいですが・・・このように内部は銅色していますが、不純分が多いせいかまだまだ本当の銅の色には程遠いですね・・・表面は鉄を含んだスラグが一部覆っています。(解りやすくするために画像の明るさを変更しております。)

    これを電気分解して電気精錬するか、もう一度同じ方法で再度純度を高める方法もあります。

     

    学生さんはこれでも十分ということなので、この状態で持って帰ってもらいました。

     

    編集後記・・・精錬を終えて

    今の日本では義務教育のおかげで、誰しもが基礎的な教育を受ける事が出来ます。

    ただそれが、長い人生で生きてゆく上で、何に役に立つか、自分の生活にどうやって役立たせるかなど・・・肝心なところの教育上の説明が抜けているように感じます。 これが理科や科学をつまらなくしている原因の一つだと思います。

    なのでこういう事をやる事で初めて酸化・還元作用という化学の定理を身を持って体験することができるのであって、昔なんとなく勉強した事が言葉だけでなくて実際に生きてくるわけで・・・

     

    その為、単純な鉱物採集でも・・・「銅鉱石を採取できれば、いとも簡単に生活の場にある銅線や10円玉などになる」と思っていては大間違いな話であって、こういう事は鉱物にむちゃくちゃ精通していても、なかなかそこまで説明してくれる人が少ないのも現状なんです。

     

    金鉱石でさえも、そのほとんどが石英やその他の岩石なので、中に含まれる微量な金をどのように取り出して、純度の低い金を流通レベルに乗せる事が出来る「99.9%以上」に精錬しようものなら、その租金に含まれている銀なども精錬で取り除かなくてはいけません。それがいかに大変な事なのか・・・

    精錬作業は純度が上がるごとに不純物が薄くなってゆくので、普通に考えればそのほうが楽に感じますが、しかし実際には全く逆で、薄くなればなるほど希薄な成分だけを取り除くのがだんだんと難しくなってゆくのがこの精錬の一番難しいいところです。(一部例外もあります) しかもここには膨大な手間と電気やエネルギーがかかるんです。

     

    なので元々含まれている量がただでさえも微量の「レアメタル」と呼ばれる金属を、それ自体を鉱石から取り出して純粋な金属やそれに近い酸化物や有機化合物にして、しかも産業に利用できるような形に変えて、そんでもって量を確保することがいかに難しいのかが少し考えれば解ると思います。

     

    それにこういった背景には、貧しい国での小さな子供が過酷な鉱山で働かせられている現状や、精錬の際に排出される鉱滓や廃液が自然環境にもたらす負の影響も必ずあるわけなのですが、そのレアメタルを大量購入して大量消費している先進国がもっと現状を把握する必要性があり、そういった原石からの利用を減らし、銅やアルミニウムのようなリサイクルの技術を確立できる事を目指すべきで、このようなリサイクル確立に力を入れないといけない転換期がもうすぐそばまで来ているとも感じています。

     

    そのためには、以前の記事で書いた、火葬された人の遺骨(残骨灰)に含まれている、医療行為で埋設されたインプラント(金歯や銀歯・人工関節)などに含まれる有価金属をいかに有効利用するなど・・・遺骨だけに「デリケートな問題だ」といって・・・いつまでも下を向いていては、いけないように感じます。(現生に合致したドライに考えて見る事も必要)

    まぁこういった問題は、個々の宗教観やそこにある個人の倫理感などにも大きくかかわっていることなので、それ相当なことが無い限り大きく変化をさせるのは難しいと思っていますが・・・

     

    なので今回一緒に精錬をしてくれた学生さんが、この「銅鉱石からの精錬という作業」にどういった感情を持ったのか、それがどういった形で今後の作品になるかが楽しみでなりません。

    今日、目の前でこの記事を読んでくださっている、皆さまが見てるPCやスマートフォン、ここにも沢山の貴重な金属がつかわれています・・・周りを見ても建築物にも・・・走っている自動車にも多くの金属類がつかわれています。

    「いやいや・・・俺んちは牛糞とその辺の土で練って作った「日干し煉瓦」なんで・・・しかも乗り物は牛車」という方は別として・・・こういった金属類がつかわれていないところを探すのが難しいくらいです。 それは大昔に誰かが手さぐりで始めたことで、このような便利な生活道具に生まれ変わっているという事を少しでも感じてもらえればと思いまして記事にしました。

     

    普段こういう責任逃れ的な事はあまり書きませんが・・・今回だけはちょっとした注意事項です。

    精錬内容につきましては、解説不足や写真が足らない部分も多々あります。 このような大量に世の中に出回っているような金属類は、特に精錬効率が向上されて様々な精錬方法が確立されています。 そして鉱石からの精錬は出来るだけ少なくして、リサイクル品の回収や精製をへて身の回り品に大量に使われるようにシフトされてきてもいます。

    なにせ素人が挑戦した事である為、本文中で行われている作業のすべてが正確に当てはまると言えない事をご理解頂けると幸いです。

    (以下→小学生でもわかる直訳:だからワレもこの道のバリバリのプロやぁないから、これがどうのこうの?あれがそれでなくて、いやぁぁ〜ん!痒いところはもっと下などなど・・・長年連れ添ったジジババが炬燵の中で繰り広げている阿吽の呼吸かテレパシー交信みたいなやつでお茶が出てきたりでもなくて、よくある不謹慎潰しみたいなヤツだったら喧嘩上等!!受けて立つので・・・そういう猛者がいたらぜひ俺んちで自作炉&周辺機器持ち込みで銅の精錬コンペでもヤルか! 負けた方が熱々の溶湯を首筋に流し込まれる罰ゲーム付で・・・)と言いたかっただけです・・・(笑)

    まぁ正気を取り戻して・・・

    もしもご自宅で同じような実験をトレースする際は、高温の熱モノを取り扱う装備やテクニック、排出されるガスの作業者や周囲への影響も考えていつもの記事よりは安全な実験計画を練ってくれると助かります。 あと高温で溶解した金属溶湯は一つ間違えれば重大な事故や火災に発展する恐れがありますので、安全には特に気を付ける事が必要です。

     

    では長文をここまで読んで頂きましてありがとうございました。

    ではでは・・・

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