Lime JuiceLimeの活動日記
アウトドア・鉱物採集・鉱山探索・自然観察・廃墟・ガラクタ収集、その他なんでもあります。

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すごい「るつぼ」の話し 02:01
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    ※2019.05.27 夜中に半分寝ながら書いてたので・・・笑 誤字脱字だらけの部分を修正しました。

     

    とにかく夏が来た・・・もう梅雨なんてブッちぎって・・・そんな天気! 

    なんとブッちぎり過ぎて、北海道なんかは39℃越えの暑さになったそうです。マジかっ!!

    ホントこの急な暑さに体調を崩さないようにしなければいけません、フィールドに出た時は、早めの水分補給など熱中症には特にお気をつけてくださいね。

     

    これからの季節、私が働く研究職では少し敬遠したい仕事がある・・・それは高熱の炉を使った焼成作業と呼ばれるもの!

    それもこの炉が設置してある部屋は、そもそもエアコンなんて無くて、夏の炎天下に熱せられたスレートの小屋に置いてあるのを扱う事になる。昨年の盛夏には、炉が稼働している時は部屋の温度計が60℃を超えていた。

    さすがに温度の制御機器は、壊れるのでエアコンのきいた隣の部屋に置いてあるのだが・・・この作業中はスポーツ飲料がほんと欠かせない。

    実はこんなHotで地味な作業に欠かせない物があるんです。

    それは、「るつぼ」と呼ばれる理化学機器、まぁ敬意を払い正確な呼び方はをすれば「理化学陶磁器」の一部である。

    義務教育の段階では、磁性るつぼという物をたまに使うが、大学の無機化学系に進むと下の写真にあるような、アルミナと呼ばれる物で出来た物に出会うことなる。

    実は後で紹介するが、この「るつぼ」を無償で提供して頂いた、このような理化学陶磁器をオーダーメイドで作っている会社・・・「つくばセラミックワークス」の方にご厚意を頂きました。 ほんと貴重な物を提供して頂きましてありがとうございました。 

     

    つくばセラミックワークス ブログ https://tcworks.blogspot.com/

    映画好きの管理人さんが運営するブログは必見 焼き物を解かり易く解説する動画なんかも、見る人が見れば面白いが、かなりコアなユーザー向けです。

    IMGP2853.JPG

    写真は提供して頂いた「るつぼ」の数々・・・
    まぁ、その時のやり取りで頂いたメールには、当の本人もおっしゃっていらっしゃるのですが・・・
    >かえってコアなファンしか食いつかないような気もしつつ、こういう出会いがあるのは本当にうれしい限りです。
    「私もとても嬉しいですね・・・コアなファンだけに・・・(笑)by Lime」
    まぁこんなやり取りから始まった訳で・・・こういう出会いと言うものはほんと突然なんです。
    なので大切にしたい瞬間でもあるんですよね!
    まぁ長年御贔屓のブログ読者の皆様ならもう書くまでもありませんが、私のブログでも現実はやはりそういった感じで、当たり障りない事を書いても、ネットには情報が溢れすぎて、やはり読む側にはなかなか響かないモノなんだと最近は感じていまして・・・しかし炎上すれすれのラインを狙うだけの勇気もないので仕方なく、まぁそれでも陰では何を言われているか解らない世界なので・・・あえてこういったコアな情報を載せたりしているんです。
    でもあまり深入ると取り残されてしまう読者さんもいたりしながら・・・ここは八方美人にならないようにやって行くのが難しいですね。
    「コアなファン・・・それでいいじゃぁないですか!私は好きです・・・♡♡」(なんで!!ハートなんだよ!って突っ込まれそうですが・・・)
    もう勢い余って脱線しまくりで・・・そんなハートマークと言えば・・・
    うちの会社にいる、入社数年の20歳そこそこの若いOLから来る業務連絡バリバリのメールに付けられているハートマーク、本人いわく、あくまでもただのコミュニケーションマークと・・・言いながら・・・
    「書類作っておきましたので是非確認をお願いしますね!・・・赤いハート♡
    この凄まじいほどの常識外れで、しかも上から目線の文章に、怒るのも呆れて何故か”ときめきヤラれる”中間管理職が多発!!・・・50過ぎのおじさんには心臓の強心剤としては「救心」より効き目と常習性があるように感じます・・・(笑)
    今風の歌手のフレーズにたとえるなら、「僕の心臓のbpmは190になったぞ」と言ったところだろうか?(笑)
    まぁそういった意味でも「るつぼ」に関しては、まぁ物がモノでmonoだけに、普通のヤキモノ屋さんが見てもかなりコアな分野なので、これをうまく解説する難しさにはきっと色々と苦悩はあるのでしょうね・・・?
    でも私のように研究室で唯一、私の事を理解してくれるのが「るつぼ」なんで・・・という我々には面白いんですが・・・笑 
    折角の機会とみてこの問題を少しは、”ときほどければ”と考え、私がひと肌脱ぐ事にしようかと思いペンを取った訳なんです。
    鉱物採集で採集できる鉱物の中に、「酸化アルミニウム」を含む鉱物は沢山ある。 純粋に結晶化して、赤色になった物はルビーその他の色をしたものや透明の物をコランダムやサファイアと称される。
    この酸化アルミニウムと呼ばれるものは、元の「金属のアルミニウム」とは全然違った、凄まじい硬さと耐熱性をもっている。乱暴な言い方かもしれないが酸化アルミニウムを含んだ鉱物は硬い物が多いと思ってもいいかもしれない。(かなり乱暴な表現ですが・・・)
    そのため、1000℃近い温度にも耐えれるので、色の悪いコランダムやサファイヤ(通称=geuda=ギウダ)を高温で長時間加熱処理して発色させるトリートメント処理が可能なのも、その物質が持つ耐熱性があるからなのだ。
    以下の写真は採集地で行われる高温炉を用いた発色処理 この中にギウダを入れたるつぼがセットされて、加熱処理されている。
    ちなみにこういう耐火物で囲われた物を通称「マッフル炉」と言われているのだが、ここでマッフルとはという疑問が出てくる。
    maxresdefault.jpg
    酸化アルミニウムにクロムが入るとルビーの発色が得られ、その他の鉄やチタンが入ることで青いサファイヤが出来ると言われている・・・もしその他の元素、例えばベトナムのように地質がマグネシアやドロマイト質で、しかもマグネシウムリッチになればどうなるだろう、その場合はスピネルができるわけで・・・別に宝石質の物がばかりがスピネルでなく、実際にこのスピネルも高温に耐える事が出来る為、このような物を総じて耐火物として使われることになるのです。
    さてこの炉について出てきた「マッフル」と言う言葉・・・実は簡単に言うと「おおう物、隔壁」と言う言葉がある。
    簡単に言うと寒い時に巻く「マフラー」もその語源はマッフルである。
    まずは以下に解かりやすいリンクを貼っておいたので見てほしい・・・
    おぃ!Limeのヤロウ!リンク先間違えてるやろ!と思った人、まぁまぁ冷静に・・・ねぇ!よくよく考えるとほらあったかいでしょ!
    まぁ今日のような熱い? 暑い?日にやるネタじゃあねぇけど!!・・・(笑)
    鉱物の名前はスゲー知っているが、さすがに「カップル巻き」なんて言葉今初めて知ったぞ! という自分を含めて鉱物沼にすでに口元までズブズブに沈んでいる、老若男女の皆様、まだ先ですが今年の冬はぜひこれを参考にしてもらえると、寒い冬の採集をHotに乗り切る事が出来そうですね。
    「だから!今やるな!」と言われそうですが・・・
    なので?・・・こういった、るつぼは高温を維持するためには、さらに周りを耐火物で覆う事で熱を逃がさすに高温状態を保つ事が可能となります。 
    しかしすでに前のリンクの画像が脳裏に残ってしまい、先に進めない人がいるようなので、ここでちょっと冷静になりましょう・・・(笑)まだ先が長いんで・・・
    69531692.jpg
    ガスバーナーを用いた加熱の場合はこのような、マッフルと呼ばれる壺のような物の中にるつぼをセットして使います。
    あえて言っておきますが・・・「巻くふりをして一緒に巻かれる」ような荒っぽい技は必要ありませんが・・・(笑)
    37440460.jpg
    セットしたら上の蓋を閉めて、下からバーナーで加熱します。
    img_0.jpg
    右の状態では、熱がるつぼから逃げてしまい、るつぼは一定以上高温になりません。
    そしてこの”るつぼ”には色々なサイズが存在しています。 そして驚く事に使用されているアルミナの純度は99.99%(業界用語で4N=フォーナイン)とかの物を使用する事で、アルミナ以外の夾雑物の混入を防ぐ事が出来ています。
    なので、このるつぼ自体を焼くのも相当な高温を要するわけで、焼成前のひずみなどから割れてしまう物もあるため、作るのは相当な技術が必要になってきます。 その辺は「つくばセラミックワークス」さんのブログを参照にしてもらえればと思います。
    IMGP2854.JPG
    しっとりとした触感のこちらは「アルミナ多孔質るつぼ」
    IMGP2855.JPG
    こちらはツルピカの緻密質と呼ばれるもの、使用するシーンに応じて変わります。
    IMGP2856.JPG
    肉厚は2mmほどしかないので、このように光を通します。
    これをドロドロにした粘土からこのように成型するわけで、相当な熟練作業が必要になります。
    IMGP2857.JPG
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    透光性は無論のこと、硬いもので軽く叩くだけでキーンといい音がします。
    IMGP2859.JPG
    底の形もこのように平らな物から緩やかな円弧を描いた物まであります。
    IMGP2860.JPG
    こちらのるつぼは色が少しアイボリーな感じで、光も良く通します。
    酸化ジルコニウム製のるつぼになります。 ブログではその重さまで表現はできませんが、Zr(ジルコン)は重いので、このるつぼ自体も相当な重さになっています。
    IMGP2862.JPG
    もう説明しきれないくらい、色々なサイズや形が存在します。 使用する機器のサイズに合わせて作る事も可能です。
    材料によっては相当高価な物もありますが、焼成する物や熔解する金属によっては、それこそこんな芸術品のような美しく繊細な物でも1回きりで終わりという、まさに使用シーンによっては美人薄命な物も存在しています。(決して安価な物でもないのに)
    余談ですが、こういった物は一般的には耐火物と言われますが、その種類や機能は使用される素材によってや、中に入れる材料などの相性、そして耐熱温度などによっても色々と選択します。
    まえに、乳鉢の特集を組んだ事がありましたが、あの時は素材同士の硬さが重要でしたが、このるつぼの場合はもっと複雑でもう少し化学寄りの解釈が必要になります。 中に入れる物との反応性も加味しないといけないので、選択には知識と経験が必要になってくるのが、同じ理化学陶磁器類の中でも少し扱いが難しい部類に入ります。
    時間があったので、耐火物のヘキサゴンチャートを書いてみました。
    IMGA0434.JPG
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    銅の精錬で使った黒鉛るつぼを中心にそれぞれの耐火性などによって、また使用している材料素材によっても名前が違ってくるのが面白いです。黒鉛がいかに万能か解かりますよね。
    酸化アルミニウムと酸化マグネシウムは合わさると、スピネルが生成します。それをスピネル系耐火物と言います。
    実際にマグネシウムを含んだ材料を酸化アルミニウム系耐火物で加熱すると、スピネルが生成して耐火性が増す事もあります
    アルミナ・クロミア系耐火物は、多少乱暴ないい方ですが、うまく結晶化すればそれこそルビーになります。
    水晶の主成分であるSiO2(酸化ケイ素)も立派な耐火物の一つです。 それを実際に利用した「石英るつぼ」という物も存在します。
    このチャートをよく見ると、何となく身近な鉱物の生成にも近い物を感じる事が出来ると思います。
    向かって左側は酸性岩である花崗岩が主流の岩石とみて、右側はアルカリの石灰岩になります。 自然界でこの二つが出会い接触変成する事で「スカルン鉱床」が生成するわけで、ちょうどスピネル耐火物の当たりに代表的なガーネットの生成が認められます。
    まぁこれはあくまでも耐火物のチャートから簡単に言ってますので、自然界ではもっと複雑な要素要因が重なっている事には誤解が無いようにしてくださいね。
     
    私達の日常にある化学品や無機材料や最先端の素材は、このような基礎研究で成り立ち、そこに使われる素晴らしい精度や純度で作られた理化学機器によって、その研究は支えられています。
    そして縁の下の力持ち的な存在で、そのような器具を作ってくれるメーカーや企業、そこで働く人に支えられているようなものなんです。普段では目にする事のない物に数々の恩恵を受けて、私たちのこの暮らしが成り立っていることはあまり気が付きません。
    そんな仕事に携わる方に私は感謝をしながら、このような製品を使い続けてゆきたいと考えます。
    そんな事を考えながら、今回は「るつぼ」という物に光を当ててみました。実際に光当ててるし・・・
    今回も長文読んで頂きありがとうございました。
    Special thanks!! 
    「つくばセラミックワークスのF様」 貴重な”るつぼ”をご提供願いまして誠にありがとうございました。

     

    ではでは・・・

     

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