2018年度 地元小学校科学クラブ 液体窒素の実験 | 00:38 |
前回の台風24号に引き続き・・・25号の台風の予想が心配だった・・・それは楽しみしている彼らとのイベントが無くなってしまうからだ・・・
すでに次の25号が東シナ海を北上している、その合間のちょっと気温が高めの日に、液体窒素で作ったアイスクリームが食べれる・・・補助に付いている先生たちも同じ楽しみをシェアできるのが、私のやっているこのクラブの醍醐味なのだ・・・
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この課題は、実は夏休みの前に行われる予定であったものだ。 その時も続いた雨の影響で大雨洪水警報が発令され、子どもたちは早帰りになって、その回のクラブ活動は中止になってしまった。
中止になってしまったが、クラブの内容は事前に伝えてある。「せっかく楽しみにしてたので残念だなぁ〜」と私も思っていた。
彼らが夏休みに入って数日した、それはとても暑い日に、買い物先のスーパーの駐車場で一人の生徒と鉢合わせになった。
私の存在に気が付いた彼女は・・・
ちょっと不安げな顔をして私に近づいて「先生!液体窒素の実験いつやるの?みんなも聞いていた・・・」と尋ねられた・・・
一緒に来ていた親さんは、自分の娘が突然見知らぬおっさんに話しかけるものだから、その心配げな顔が何ともおかしかったが・・・
彼女が「クラブの先生だよ!」と紹介してくれたら、心配そうな顔が突然笑顔に変わった瞬間をいまでも覚えている。
私は、両親にも軽く自己紹介と挨拶をしたら、何故かものすごく感動されてしまった・・・(笑)
学年にしては少し小柄な彼女に、私は腰をかがめて目線を合わせ「じゃぁ・・・夏休み終わった初めのクラブの時に計画するね・・・」とやさしく言った。 彼女は白い歯を見せて胸の前で左手握りしめて「よしっ!」と小さなガッツポーズをとっていた。
私は「そうだ!みんなにも伝えといて・・・」というと少し離れて、頷きピースサインを出してから駐車場にいる車で待つ両親の方に走り去っていた。
そんなたわいもないやり取りが、クマゼミの蝉時雨が降り注ぐ駐車場での、なんかとてもすがすがしい瞬間だった。
まぁ今日がそのクラブの仕切り直しである。
クラブの日は会社にはあえて理由を言わず、有給をぶッ込んでいる。理由はあえて言った事もないし聞かれた事もない・・・たぶん聞かれても適当にごまかしてやろうと考えている。
まぁ世の中どういう事であろうと、必ずしもいい事をいう人間ばかりでない、どの世界でも必ず上げ足を取ろうとしているヤツはいいるものである。 そんな事いちいち気にしていたら新しい事なんて何にもできなくなってします。
さてさてお馴染みのチェックのテーブルクロスといえば、我が家のキッチンラボ!!
朝早くから、液体窒素で作るアイスクリームのレシピを調整しました。
下は卵液と牛乳を混ぜたもの・・・
前は、動物性脂肪のホイップを使用していましたが、3回目くらいからは植物性脂肪のホイップでもうまく作れる事がわかったので、最近のレシピは植物性のホイップを使っている。
一人100ccでも、子どもたちは30人いるので約3リットルが目安になる。
牛乳1リットルを追加して、トータル量を調整した。
砂糖を水に溶かした、手づくりのガムシロを添加してから、ホイップを入れます。
容器が2個あるのは、一度に作れるこれ以上大きなものが無いので、2個のボールで一度に作っています。
この後、少しづつ交差させて味を合わせます。
消毒をしたペットボトルにアイスクリームの液を充填して、クーラーボックスに入れて学校に持ち込みます。
待ちに待った子ども達、久しぶりに会う事ができて嬉しいです。
さて、クラブ活動開始です。
机に置かれた、ビーカーに液体窒素を注ぎ込みます。
その踊るように沸騰する無色透明の液体に興味深々です。
小学生レベルでは液体窒素を直接扱わせる事はしません普通やりませんが、私が自宅で行ったRM(リスク・マネジメント)を元に実験プログラムを考えてあり、それこそよほどの事が無い限り安全に実験をできるように考えてあります。
なので、初めにきちんとその物の持つ危険性を、過去の事故事例から子どもたちに説明して実験に取りかかっています。
ミカンを凍らせて冷凍ミカンを作る実験です。 さて冷蔵庫でゆっくり凍って作られる冷凍ミカンと何が違うのでしょうか?
誰かか言った「あまりジャリジャリしてない!」・・・そうなんです!急激に極低温で凍らすため、氷の結晶が成長せずジャリジャリとした触感が無いんです。 ミカンのさのうを氷が破壊して破いていないので、溶けても果汁が溶けだしてきません。
なので、動物の細胞を補完する時はこのような極低温で処理します。
さてどんな冷凍ミカンができたかな?
ミカンを剥くのにてこずる?
「先生!これすぐ食べていい?」
「あぁ!いいけど口の中で張り付いて火傷するよ・・・」
「えっ!マジ!・・・どうすればいいの?」
「いゃぁ〜それは自分でかんがえてみ・・・」そんなやり取りが楽しい・・・
しばらく時間を置いて口に運ぶ子もいたり、舌にくっついて痛かったと言ってくる子もいて、ほんと面白い・・・
まぁいずれにしろそれが原因で死ぬ事は無いので大丈夫だ・・・
おぉ〜マシュマロ!!・・・
だれやこんな美味しい素材をもってきた子(実験的にも・・・そして食べてもおいしい)
よーく凍らしてから、口に入れてハーっとやると口から白い煙が噴き出します。私が試しにやるとみんな真似しだす。
そう!液体窒素と言えば、「ターミネーター」か「花」というくらい有名な実験
細胞中の水分が一瞬で凍って、握るとバリバリになるやつ・・・
テレビでやっているのは見た事あるけど、自分でやってみると・・・その独特の感触や、その時の音などが感じ採れて感動します。
「すげー冷たい!でも大丈夫!」
凍らす実験はひとまず終了!
さてこれからがアイスクリーム作りです。
フレーバーは何と62種類・・・いえいえ冗談です。
4種類から選びます。 抹茶・ストロベリー・チョコレート・紅茶です。
持ってきた保温カップにアイスクリーム液を入れて、それぞれのフレーバーを足してゆきます。
誰かが言った・・・「ハーゲンダッツよりも31よりも美味しい」
それに対して私が返答・・・「そりゃそうだ・・・かかっているコストが違うぞ!」
「一人のその保温カップに注いだ液体窒素は、500円くらいかかっているので・・・」
「げげぇ〜マジか??」「スモールサイズならダブルにできそう!」なんじゃそりゃ・・・(笑)
そんな会話の中にもリアルなコスト計算が出てきたりと、とても面白い・・・
今日も怪我もなくて無事に終える事が出来ました。 みんなありがとう!!
※後記
日本人が今年もノーベル医学賞を受賞した。 そして下積みの基礎研究から生み出された「オブジーボ」という素晴らしい抗がん剤は、その基礎研究からの賜物なのだ・・・
「なぜそれがそうなるのか?」だれしもが思う単純な疑問!・・・しかしそれをひも解き解決しても、ほとんどの基礎研究の成果が製品化につながるわけでなく、闇に葬り去れるのが現状である。
国内の研究者の中には、日の目を見ること無く静かに研究室を去る事になった者が少なくない。まぁ「金の切れ目が研究の切れ目・・・」
しかも、そういった基礎研究にはどちらかと言うと国からも注目度が少なく、国内では自動車産業やIT産業などに目が行きすぎて、人間の生命にかかわるようなライフサイエンス分野では特に注目度が低いのが現状である・・・
人の体はまだまだ未知の部分がある、そのため研究はほとんど手探りで始められて、研究者は地を這うような基礎研究を行う事になる。私の知っている教授もほとんど研究室が家みたいなもので、そこで寝泊まりしている。しかしそこまでやっても・・・そういった分野にはなかなかお金が投入されない。
学生に酒をおごり、焼き肉を喰わせて、自分は研究室のソファーでカップ麺をすする・・・いつか突然現れるその偶然のサインを見逃さないように・・・きらりと光る砂金かそれこそ1カラットにもみたない宝石を見つけることになるのだ・・・
まぁたわいもない話だが、この小学校のクラブ活動には年間10,000円が市の教育委員会から支給されるだけだ・・・手元に入ってくる時にはちゃっかり税金が引かれるので満額にはならない・・・(笑)
因みに今回使用した液体窒素は20リットルで16,000円なのでそんな費用はあっという間に飛んで足がでる・・・まぁ材料費の一部は個人で負担してくれて最終的に人数で割れるのでいいのだが・・・
さてこれをいつまで続けられるかは、私の「おこずかい帳と私の気力の問題」だけなのだが・・・
いつも喜んでくれる子ども達のその屈託のない笑顔を見ると・・・「まぁいいか!!来年も続けてみようかな?・・・」と思ってしまう。
せめてもの救い・・・今までの教え子の中から、研究者に進むものが出てくれる事を私はいつも夢を見ている・・・
ではでは・・・