以前のアマゾナイトの記事 分析編 | 16:09 |
以前、アマゾナイトの採集記事にて、「yyy」さんなる方より、以下の問い合わせがありましたので、さっそく機器分析をしてみました。
「私も広島の花崗岩地帯で、お載せになっているものとほぼ同じ色の文象花崗岩のアマゾナイト(?)を見つけたのですが蛍光X線にかけてもらったところ、ほぼ純粋な曹長石という結果でした。(鉛はもし含まれていても測定精度以下の量でした)
アマゾナイトといえば一般的には鉛を不純物として含む微斜長石だと思っていたのですが、ライムさんが採集されたのも本当にアマゾナイトですか?」
コメントを頂いてから、早々に試料調整などを行いましたが、いじっている機器メンテナンスなどと重なり、時間がかかってしまったことはお詫び申し上げます。
では本文・・・
サンプルは長石の結晶面が見えているものと、紋象花崗岩が青白く色ついている物の2種類を分析してみました。
ちょっともったいない気もしましたが、なるべく青色の色調が強いものを選んでみました。
こちらは紋象タイプの物・・・分析の表記はアマゾナトと紋象アマゾの2種類としています。
ハンマーで小割してから、アルミナ乳鉢で擂りつぶします。
XRDにかけるには、アルミ製のステージに粉のサンプルを押し付けて、試料を作成しますので、なるべく細かい方がいいです。
試料面に凹凸があるピークの位置が変わったり、ピーク強度にも影響が出てしまうことがあるので、慎重に作業を進めます。
測定室のLEDのライト下では、擂り潰したサンプルはなぜか青っぽく映ってしまってますが本来はきれいな白色になりました。
ガラス板で試料を押し付けると、このような平面が出ますので、この状態で装置にかけます。
回折装置の試料台にセットします。 均一性を持たせるために、測定中はこの試料台は任意の回転数で回転します。
左側の放射線マークの黄色いステッカーが貼ってある部分が、X線発生管が入ってます。
右側の部分がX線強度を読み取るセンサーです。この部分が、指定した角度になるまで円弧状に上がって測定してゆきます。
私が学生のころは、プロッターという機械が、グラフを作成してましたが、今はPC画面に記録されるので、とても便利になってます。 このまま同定作業もできてしまうので、不明サンプルでもなれれば、簡単に何か知ることが可能です。
結晶化アマゾナイトと紋象タイプを重ねて表示しています。
上段が結晶化したものですが、ほぼ微斜長石のピークが出ています・・・しかし若干の曹長石も入っているのがわかります。
この様子からは一部に曹長石の結晶が混ざっているものと考えられます。
紋象アマゾナイトの方も、同じような混合物なのかもしれませんが、海外産にあるようなもっと色の濃いものはどうなっているかは不明です。(推測では、微斜長石が多いかもしれません)
XRD(X線回折)では結晶形から直接同定が可能ですが、例えばアルミナなどの成分がどれだけ入っているかはわかりません。
その場合、蛍光X線分析を使います。
試料は擂潰した物をそのまま使用できるので、後日測定してみました。
見にくいかもしれませんが、薄く丸を打った部分・・・2θ角度の27°と34°付近にPb(鉛)のピークが出ました。
このグラフは、この部分が見やすいように大きくピークを拡大したもので、残念ながら成分分析の濃度測定には測定限界以下のため数字としては取れませんでした。 しかし鉛元素のピーク部分に小さなピークが表れていたのは事実です。
前記のことから、この青い長石は、アマゾナイトといっていいと思います。
しかし、海外産にあるような完全体のブルーの長石結晶の物はなかなか見つからないので、国内で採集されたものでは貴重なものと思います。 ちなみに蛍光X線では含まれている元素成分濃度までは確認できますが、結晶形までの同定はできないように思えますがいかがでしょうか? yyy様が採集されたものでも、XRDで分析することでひょっとするとアマゾナイトといえるものかもしれませんね・・・
実はミネショーで、アマゾナイトの加工品でも買おうかと思っていましたが、すっかり忘れてしまって買い損ねてます。
ここで使用した、X線回折のピークデータは、回折ソフトに内蔵されたものと、滋賀県工業技術試験センターにあったものを参考にして同定を行っています。
ではでは・・・