キムリアがやってくる! | 16:02 |
※記事にについてのお願い
私が提供したのは今から10数年前の事になります。 コーディネートに関する記述に関しては、現在では変化してきている部分もあります。 もし興味がありましたら誤解の無いように、以下の「日本骨髄バンク」より最新の情報を入手して登録をご検討くださるようにお願い致します。
日本骨髄バンク https://www.jmdp.or.jp/
今年の11月は例年よりかなり暖かくなったらしい・・・しかしこのところの気温の乱高下は激しく、体調を管理しないと風邪を引くことになりかねない。
まぁ自分の体調どころか、育てている大量の多肉植物の管理の方が気になり始めている・・・
私は至って健康体なので、病院に罹る事はあまりない・・・なので生まれてこの方、自身の病気で入院したり、手術をしたことなどは無い・・・なので日ごろの健康管理の一つとして献血を行っている。
今年はまだ暖かい方なのだが、寒くても、これまた暑すぎても献血者の希望者が減る傾向にあるのだが、最近はほんと若い人の献血意識が遠のいているので今後の「献血」活動にちょっと不安を感じている。
献血は事故などでの大量輸血のイメージがあるが、使用されるほとんどが、病気の人への血小板や血漿の輸血に関してがとても多い事はあまり知られていない、特に高齢者の病気の治療にこの血液製剤や血液成分輸血が多く使用されている現状がある。
そんな健康体で有りながら、2回ほど全身麻酔をされたことがある。
骨髄バンクのドナーに選ばれたのが切っ掛けで、骨髄液の採取のために入院をして、手術室に入れられて麻酔をかけられて3時間程度の手術を経験した。
ドナー適合者は数千〜数万人に一人と言われるが、骨髄バンクに登録していて、規定されている2回までの提供をした人は現在でも1000人もいないだろう・・・
私はたまたま2人の、白血病の血液の病気で苦しんでいるレシピエントが見つかり提供することになった。
骨髄バンクの規定で、互いの個人情報は明らかにされない、こういったブログ内でも提供した日を公に書くことも禁止されている・・・それは互いの公平を維持するために決められている事なのだ・・・しかし提供が決まれば、移植コーディネイターさんから
相手の大凡の所在地と年齢と性別だけが知らされる。
私の場合は、1回目は関西地方に住む40代男性、2回目は東海地方に住む30代の女性という事だけ知らされた。
さて骨髄提供といっても実際に目にすることは少ない・・・
1回目の時はバタバタしていて余裕もなかったので、先生にカメラを渡すことも無かったが・・・2回目は気持ちに余裕もあって、さることながら私の興味に火がついて、先生に術中の写真を撮ってもらえた。
※以下から実際の施術シーンの写真が含まれます。
「骨髄」は骨の中にある部分でそこで新しい血液が作られている場所、背中にある「神経がと通っている脊髄(せきつい)ではない」のでお間違えなく・・・・たとえ話に「骨の髄までしゃぶりつくす」といわれる語源の場所でもあります。
骨髄提供ではそんな骨に、ボールペンの芯程度ある大きなぶっとい針を刺して、直接注射器をセットして骨の中の骨髄液を吸い取ります。
簡単に言うと「骨盤」にある腸骨という部分に針を刺して採取する、字は違うが蝶々が羽を広げたように見える場所が最も採取に適していると言われているので、全身麻酔下でうつぶせに寝かせられて施術が行われます。
「Limeさんすぐに眠くなりますよ」と催眠術師?? じゃぁな〜い・・・優秀な麻酔科医が私にプロポフォールという麻酔薬を静脈にとった点滴のラインの3方向バルブを切り替えて流し込まれる。 このプロポフォールはマイケルジャクソンがオーバードーズして死亡する原因になった薬なので聞いたことがある人も多いのではないだろうか? 水に溶けない薬剤をエマルジョン化してあるので、まるで牛乳のような白濁した薬剤なのだ・・・実はこの薬・・・「血管痛」という作用を持つ物があると知っていたので、私はその「血管痛」を体験したくて先生に「血管痛」がでる物を希望していたが・・・・残念なことにその痛みを感じる前に「完全に落ちて」しまった・・・(苦笑)
このあと、自発呼吸が停止するので、早々に気管挿管されて写真で、緑の術衣を着た麻酔科医の左後ろにある、全身麻酔器という機械で人工呼吸下にて麻酔管理された状態で施術が行われることになる。
ここからが看護師さんたちが大変! 私の「ち○ち○」に排尿用のチューブを挿管して、体重が70kg程度ある私の体をうつぶせ寝の状態に体位変換しなくてはいけません。さぞかし重たかった事か・・・(笑)
上の写真にある器具・・・これを皮膚の上からキリのようにグリグリと骨に穴を開けながら、骨の髄まで到達させます。
上のスリーブに、下の針が付いたものを挿入して、一体にしてから青いハンドルを握ってグリグリと骨に穴を開けます。
そのまま骨髄に到着したら、合体させたものを再度分解すると・・・スリーブの上にある口に注射器を挿して骨髄を吸い上げます。
おぉ!わたしの汚いケツが丸出しではないか? これ見れば採取器具の使い方は一目瞭然
吸引は結構な力が必要だそうです。 スポンジ状の骨髄部分に溜まった骨髄液を吸い出します。
血液内科の先生方が総出で作業?を行います。
このあいだ私は気持ちよく爆睡中?!
注射器で吸い出して、専用の輸血バックに移し替えを行います。
奥にいる先生が、骨髄液を吸い出した注射器からバックへ移し替えています。
今回は450mlていどの採集を行います。
1回目の時は、レシピエントさんが男性だったせいか500ml以上を抜きました。
これ結構な重労働かも・・・同じところでは取れなくなるので、その場合は針を移動させて打ち込んで採取するようです。
因みに麻酔が効いているので、この時点では全く痛みは感じませんよ・・・
やっと溜まってきた感じです。
ここでみんな結構驚かれるのが、「骨髄液が赤い」事・・・ここには血液も含まれますが、この中に、血液を作るための造血細胞が多量に含まれています。
この専用の輸血バックにどんどん満たされていくのですが、今回は450cc程度採取されたようです。
この骨髄液はこの後、患者さんの入院している病院へすぐに届けられて、前処置された患者さんにこのまま直接点滴で投与されるんですが、患者さんは私の血液が定着するまで、私の細胞が相手を攻撃する副作用反応(GVHD)に耐えなければいけません。 この時にはこのGVHDが原因で死亡される方もいるそうなので、患者さんにとってはこれからも凄い苦痛が待っています。
私の骨髄液(造血幹細胞)が入ったレシピエントさんは、もともとあった血液型から私の血液型に変わってしまいます。
A型の人が、B型の造血幹細胞を貰えば、その人はその日からB型の血液を持った第二の人生を歩みだすわけです。 まぁそれで性格が変わるかとかそういう事はさほど心配は必要ありません。
私はこの後消毒など処置をされてから、事前に保管していた「自己血」を輸血して、抜いた分の血液を補います。
そして完全覚醒されるまで病室で寝かされます。 目が覚めたころには夕方になっていましたが、担当のコーディネイターさん来てくれて、無事に移植が完了したことを伝えられてます。
さて冒頭にある表題「キムリア」という白血病治療薬がいよいよ国内承認されようとしています。
キムリアは、よく目にする錠剤などの飲み薬でもなく・・・簡単に言うとバイオテクノロジーで生まれた・・・まさに「生きた細胞」なんです。
なのでこのように、健康な人に侵襲処置することもなく、患者さんがこの薬を点滴で体内に入れればいいんだけど・・・
こんな薬はいままで待ち望まれていましたが、実はこの薬の薬価がちょっとばかり問題になっているんです。
現在ではまだ想定なのだが、1回約「50,000,000円」くらいの薬価になるそうなのだ・・・いち・十・百・千・万・・・・?位取りを指で追わないといけない事態が出るくらい高価です。
日本国内では保険が適用されるので、薬価が5千万とするなら、年収が370万〜770万円未満の人の自己負担は月に60万程度で済むが、約4940万円は健康保険から支給されることになります。キムリアは多数回投与は不要とされているが、1回でも相当な金額になるので健康保険への圧迫が懸念されています。
今後もこのような高額な治療薬が登場の予定である・・・
・大細胞型B型細胞リンパ種治療薬「イエスカルタ」米国で4200万円相当
・遺伝性網膜疾患治療薬「ラクスターナ」米国で9600万円(両目)
病気は直したい・・・しかしこの少子高齢化の日本をどうやって乗り切るのか、ほんと難しい問題は山積みになりそうです・・・
所得や年齢層によっては、実費負担額を増減したりすることも必要ですよね・・・
私の場合、骨髄提供後は強い痛みもなくすんなり退院できました。 翌日からは会社に出ていたくらいです。
しかし稀に強い鈍痛が残る人もあって、そういう場合は最後まできちんと治療してもらえるので、何かあってもさほど心配は必要ありません。
提供してしばらくまでは、骨髄を移植した相手のことがとても気になりました。 ちゃんと元気になったのかなぁ〜とか・・・
うまく定着して、新しい正常な血液が作られてるかなぁ〜などなど・・・
そんなことも忘れたかけたある日・・・こんなものが届きます・・・
私は2回提供しているので、こんなものが2枚存在している。
金押しされた「桐花紋(とうかもん)」が内閣から公式に出された証になり、外周の網掛けの中心下に「大蔵省印刷局」の名前がすられていて、正式に日本国で作られている物という事が解ります。
そしてその年に厚生労働大臣になっていた方の署名が入っています。
知り合いの弁護士曰く・・・「こういう物は、将来お前に何かあった時に利用できることがありそうなので、大切に保管しておいた方がいいよ・・・」って教えてくれました。
まぁそれが何かはあえて書かないでおきます。
これを見て骨髄バンクに登録してみたくなったら、ぜひ登録してください。
手術シーンを見てアカン!と思った人でも、こんなことが行われているという事は麻酔が覚めても全然覚えてもないので、さほど深く考えなくてもいいと思います。
ただ単に「私のように無駄に健康な人(笑)」が病気で苦しんでいる「誰か」の為に、こういった形で少しは協力できる事があるという事を伝えたかったので、あえて記事にしてみました。
では今回も長文でしたが・・・ここまで読んで頂きありがとうございました。
ではでは・・・