鉱物採集からの新たな試み・・・ | 22:46 |
夜半から降り出した雨は結構な降水量になった。どうやら前線が通過したようだ・・・
日中はもっと涼しくなると思ったが、ちょっと湿度が高い一日になっている
さて新しいコテゴリーを追加した。 現時点ではブログでは公表できない調査し始めたばかりの産地情報などがあって、ちょっと更新が遅れ気味なので、この穴埋めに科学・実験ネタを入れようと考えた。
以前、私のブログにコメントをくれた美術大学の学生さん・・・卒業制作のアドバイスをする事になったのだが、現在でも色々と交流が続いている。
来年の話なので、まだ詳細は差し控えるが、彼女は在学している大学での制作発表があり、その後で東京の有名な美術館での発表が決まったとの事、そこでのエキシビジョンの為に、採集した銅鉱石を利用して制作物を作りあげているところだ・・・
私の知っている事でアドバイスしているが、実験が中々うまくいかなくて苦労もある・・・しかし試行錯誤して手伝いができる事自体がこれまた結構面白い・・・
鉱山のズリで採集してきた銅鉱石を酸処理して、まずは色々な物にメッキを試みてみた。
金属にメッキをするのは比較的簡単だが・・・今回は紙にメッキをする方法を・・・この夏の間に考え出した。
私が昔から使っている直流電源装置・・・電気メッキはこれが無いと始まらない
色々なパターンで紙に銅メッキをしてみる事に・・・学生さんでも簡単にできるように、できるだけ危険な薬品を使わずメッキをする方法を考えるのに結構苦労をしました。
まだまだ綺麗ではないが、ちゃんと紙に銅メッキができるようになった。
紙なので曲げても大丈夫です。
それと、巷によくある「銅色が出るペイント」ではないので、ちゃんと導電性も付加できています。
やはり練習は腕を上げます。 最近ではこのようにまっすぐな銅メッキでパターンを描き出す事に成功してます。
これ使って何か作ってもらえると嬉しいです。
最近では、「実際に銅の鉱石を精錬して、鉱石から自分で銅を取り出したい」という話になって・・・この面白そうなネタに私もちょっと夢中になってしまっている。
懲りずに再び銅鉱山に訪れて、ズリにある比較的品位の高い銅鉱石を採集した。
さて・・・現在の日本では銅鉱石から直接「銅」を精錬している企業はありません。
そもそも、銅の鉱石すら国内で採算レベルで採集をしている所もありませんので、昔あった銅鉱山はほぼすべて過去の物になっています。
それと銅自体が、リサイクルが確立された有用な金属資源であるので、スクラップから取り出した方がコスト的に採算が採れるという事なんです。
鉄でさえも「高炉」が動いている製鉄所も数えるほどしかありません・・・
こういった鉱石から目的の金属資源を得る事を、総じて「冶金」と言います。
えっ・・・すでに読み方が解からないって・・・そうなんです、それだけ使われなくなってしまった言葉なんです
「さんずい偏」なら「政治」の「治める」に使われていますが、これは「にすい」という偏になります。 「冷房」の「冷=れい」の字には使われていますよね。
なので読み方は・・・「冶金=やきん」と読みます。
日本の鉱山がまだまだ元気であったころは、「冶金学」なんて学問で、金属を精錬する為の技術を学ぶ学問があった事さえ最近は忘れられてしまっています。
この銅鉱石・・・黄銅鉱です。表面は風化しています。
これを、機械で粉砕します
粉砕中は、硫黄の独特な匂いがします。この事からも硫黄の化合物だという事が解かります。
さて銅の鉱石から銅を精製する事は、簡単ではありません。
精錬の工程の中に、銅鉱石を熔解して銅を精錬してゆく過程があり、それを行う為には1000℃程度まで耐えれる高温の炉が必要になってきます。
精錬の前段階で、銅鉱石を「焙焼=ばいしょう」するための炉が必要になってくる事もあり、溶解炉の設計を行う前段階でのテストをこの簡易的な焙焼炉で行った。
炉は身近にあるものを使ってとりあえず作ってみる、けっして大袈裟な物ではなく、七輪をつかった物でまずは試験を行う事にした。
砕いた銅鉱石を、反応助剤のコークスや石灰石とともに黒鉛坩堝(こくえんるつぼ)に入れて、七輪にコークスを詰めて過熱を行った。もちろんこれで溶かせるまでは昇温できないので、これはあくまでも焙焼専用である。
放射温度計を使って細部の温度を測ってみました。
余熱とコークスへの着火の為、ガストーチで加熱します。
保温の為の鉢は膨張差で割れてしまいましたが、それでも900℃程度まで上昇させる事は可能でした。
銅鉱石は、硫黄と銅が結び付いた「硫化銅」という成分で安定的に固定されている、なので比較的品位が高い黄銅鉱でも銅成分で30%程度しか含まれていない
あとの残りは、硫黄と鉄が結び付いた「硫化鉄」というもの、その他にも「硫化亜鉛」や「硫化鉛」などが含まれています。
その中には銀や金といった貴金属も少量含まれています。
なので鉱石を細かく砕いた物を坩堝に入れて、600℃前後に加熱する事で、できるだけ含まれる銅や鉄に付いている硫黄分を引き離します。
これ結構簡単に書いてますが、実際には簡単にはひきはがす事は難しいので、内部に入れた助剤を使って助けてあげます。
それと厄介なのが、この時点では硫化鉄との混合物になっているので、これもこの時点で加熱して一部酸化鉄にしておきます。
この後の熔解作業で、鉄を還元する事で、後の造滓作業で投入される珪石「珪素=SiO2」と結び付けて「スラグ化」させると、銅と鉄を分離する事が可能となります。(解かり易くかなり簡単に書いてますが、実際にはもっと複雑です。)
山で私に拾われたばっかりに、砕かれて造滓材にされる石英や水晶達・・・
そのため・・・その時の造滓材(スラグ化させる為の材料の事)である「珪石」と同じ成分の、山からサンプルで採ってきた形の悪い水晶などを砕いて、珪素分とします。
小さな水晶が付いていますが、こいつもじきに産まれてくる銅の為に潔く生贄になってもらいます。
下の写真は粉砕中の粉砕機の内部です・・・
機械で砕くとこんな感じです・・・黒っぽい色の物は煙水晶の破片です。
これでもまだ未練があるので更に・・・粉砕します。
粉砕終了です。水晶の面影はもうなくなり、砂にしか見えません・・・(笑)
残った硫黄分は、「石灰岩」を砕いた物を投入する事で、石灰の成分であるカルシウムと硫黄が結び付き、これもスラグになります。
こうして何度も精錬を繰り返すことで、含まれる銅の純度を上げてゆきます。
さて本日の試験はここまで・・・
焙焼は成功しましたので、きょうの昇温データを元に、今度は溶解炉を設計します。
では試験をしたら続きはまたアップしますね・・・
ではでは・・・